産休・育休中に「少しだけアルバイトをしたい」「在宅で副業を始めたい」と考える方は少なくありません。ただし、産休と育休では、働ける条件も給付金への影響もまったく同じではありません。
特に注意したいのは、産後8週間の就業制限、育休中の就業日数・時間、育児休業給付金との関係です。単に「副業収入を○円以内にすれば大丈夫」と考えると、制度を誤解するおそれがあります。
産前・産後・育児休業では、働ける条件がそれぞれ異なります。 産前休業は本人の請求によって取得し、産後8週間は原則として就業できません。育児休業も原則として就業を前提としない制度なので、働く場合は日数・時間、勤務先の就業規則、給付金の支給条件を分けて確認することが大切です。

「産休」と「育休」は続けて使われる言葉ですが、働ける条件まで同じではありません。まず自分が今どの期間にいるのかを分けると、判断しやすくなります。
産休育休中にアルバイトや副業はできる?確認しておくべき法的ポイント
最初に分けたいのは、産前休業・産後休業・育児休業の3つです。「産休育休中」とひとまとめにせず、自分がどの期間にいるかで判断してください。
| 期間 | 働くときの基本的な考え方 | 主に確認する制度 |
|---|---|---|
| 産前休業 | 出産予定日の6週間前(多胎妊娠は14週間前)から、本人が請求すれば休業できる | 労働基準法・出産手当金 |
| 産後休業 | 出産翌日から8週間は原則として就業できない | 労働基準法・出産手当金 |
| 育児休業 | 子の養育のために労務提供義務をなくす制度。恒常的・定期的な就業は原則想定されていない | 育児・介護休業法・育児休業給付金 |
産前休業と産後休業は同じ「働けない期間」ではない
労働基準法では、出産予定日の6週間以内(多胎妊娠は14週間以内)の女性が休業を請求した場合、使用者は就業させることができません。一方、産後8週間は本人から請求がなくても原則として就業させられません。
「産前6週間は自動的に就業禁止」という説明は正確ではありません。 産前は本人の請求によって休業する制度で、産後8週間の原則就業禁止とは扱いが異なります。
産後については、6週間を経過した後に本人が請求し、医師が支障なしと認めた業務であれば就業できる例外があります。厚生労働省の労働条件・職場環境に関するルールでも、この違いが明記されています。
育休中の就業は「いつでも自由に働ける」という意味ではない
育児休業は、原則1歳未満の子を養育するため、一定期間会社を休む制度です。厚生労働省は、育児休業の申出を「一定期間、労働者の労務提供義務を消滅させる意思表示」と説明しています。
厚生労働省の「育児休業中の就労について」では、恒常的・定期的に就労させる場合は育児休業をしていることにはならないと案内しています。
一時的・臨時的な就労が認められる場面はありますが、「育休を取りながら毎週決まった曜日に通常勤務する」といった働き方を前提に制度が作られているわけではありません。
副業そのものより、就業規則と給付金の条件を確認する
育児・介護休業法に「育休中は副業禁止」と一律に定めた規定があるわけではありません。ただし、本業との雇用関係は続いているため、勤務先の就業規則に副業・兼業の届出や許可に関するルールがあれば、その手続きに従う必要があります。
厚生労働省は副業・兼業の公式ページで、モデル就業規則から「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定を削除し、副業・兼業の規定を設けた経緯を案内しています。一方で、安全配慮、秘密保持、競業避止、長時間労働などに支障がある場合は制限されることがあります。
「会社の許可が法律上いつでも絶対必要」という意味ではありません。自社のルールが許可制・届出制・原則可のどれなのかを確認するのが先です。
パート・アルバイト・契約社員でも産休育休の対象になり得る
産前産後休業は、正社員だけの制度ではありません。育児休業も、パート・アルバイトや有期雇用労働者が対象になる場合があります。
有期雇用労働者の場合は、申出時点で「子が1歳6か月に達する日までに労働契約が満了し、更新されないことが明らかではないこと」が基本要件です。また、労使協定がある場合は、継続雇用1年未満など一定の労働者が対象外になることがあります。
対象要件は雇用形態だけで決まりません。厚生労働省の育児休業制度特設ページで、有期雇用労働者を含む対象条件を確認できます。
産休育休中の収入をサポートする手当や支援金の活用方法

産休・育休中の収入を考えるときは、「アルバイトでいくら稼げるか」だけを見るより、まず受け取れる給付を正確に把握する方が重要です。働き方によっては、得た賃金と引き換えに給付額が変わることがあります。
まず「出産手当金」「出産育児一時金」「育児休業給付金」を分ける
名前が似ているため混同しやすいのですが、3つは支給する制度も目的も違います。 アルバイトや副業を考える前に、どの給付を受ける時期なのかを整理しておきましょう。
| 制度 | 主な目的 | 支給元 | 金額の基本 |
|---|---|---|---|
| 出産手当金 | 出産のため仕事を休む期間の所得補償 | 健康保険 | 原則として標準報酬月額をもとに1日あたり約3分の2 |
| 出産育児一時金 | 出産費用の負担軽減 | 公的医療保険(健康保険・国保など) | 原則1児につき50万円(一定の場合48.8万円) |
| 育児休業給付金 | 育児休業中の所得補償 | 雇用保険 | 原則180日目まで67%、181日目以降50% |
出産育児一時金は、出産手当金とは別制度です。協会けんぽでは2023年4月1日以降、産科医療補償制度の対象となる出産は原則1児につき50万円と案内しています。詳しくは協会けんぽ「出産育児一時金」で確認できます。
出産手当金は休業中の給与を補う制度
勤務先の健康保険に加入する被保険者が出産のため会社を休み、その期間の給与を受けられない場合、一定の要件を満たすと出産手当金の対象になります。
協会けんぽの場合、1日あたりの出産手当金は原則として「支給開始日前12か月間の標準報酬月額の平均÷30×2/3」で計算します。詳しい条件は協会けんぽの出産手当金ページで確認できます。
給与が支払われた日がある場合でも、その給与の日額が出産手当金の日額より少なければ、差額が支給される場合があります。「有給を使ったら必ず出産手当金がゼロ」とは限りません。
育児休業給付金は「収入80%」だけでなく就業日数・時間も見る
育児休業給付金は、一定の要件を満たす雇用保険の被保険者に対し、原則として育休開始から180日目までは休業開始時賃金日額の67%、181日目以降は50%を基準に支給されます。
育児休業等給付の制度・手続きは、厚生労働省の「育児休業等給付について」で確認できます。2026年8月時点では、同ページに2026年8月1日改訂版の最新パンフレットが掲載されています。
| 確認項目 | 育児休業給付金で重要な基準 |
|---|---|
| 就業日数・時間 | 1支給単位期間の就業が10日以下。10日を超える場合は80時間以下であることが必要 |
| 他の勤務先での就業 | 在職中の事業所以外で働いた日数・時間も含まれる |
| 育休期間を対象とした賃金 | 賃金額によって給付金が減額される場合があり、休業開始時賃金日額×支給日数の80%以上の賃金が支払われると給付額は0円 |
「月収を休業前の80%未満にすれば大丈夫」とだけ覚えるのは危険です。 給付金には就業日数・時間の要件もあり、他社でのアルバイト分も確認対象になります。

ここは数字が一人歩きしやすいところです。「80%」だけでなく「10日・80時間」もセットで確認してください。別の会社で働いた日数・時間もカウントされます。
厚生労働省の育児休業等給付Q&Aでは、支給額の計算方法や就業した場合の扱いが詳しく整理されています。
2025年から出生後休業支援給付金が加わった
2025年4月からは、出生直後の一定期間に原則として夫婦とも14日以上の育児休業を取得するなどの要件を満たすと、最大28日間、休業開始前賃金の13%相当を上乗せする出生後休業支援給付金が始まりました。
なお、配偶者がいない場合や、配偶者が無業・自営業・フリーランス、産後休業中など、配偶者の育児休業取得を要件としないケースもあります。
通常の育児休業給付67%と合わせると給付率は80%となり、社会保険料免除や非課税であることを考慮すると、厚生労働省は「手取り10割相当」と案内しています。
現在の育児休業給付、出生後休業支援給付、育児時短就業給付は、厚生労働省の「育児休業等給付について」で最新情報を確認できます。
自分の場合にいくら受け取れるのか概算したい方は、厚生労働省の産休・育休中の経済的支援 かんたん試算ツールを使うと、出産手当金や育児休業給付金などの目安を確認できます。
有給休暇や給与が支払われる期間は給付ごとに扱いが違う
現在の記事で誤解しやすいのが、「有給休暇を使えば手当は受け取れない」と一括りにしてしまうことです。出産手当金と育児休業給付金では、給与が支払われた場合の調整方法が異なります。
「働いて得る収入」と「失う可能性のある給付」をセットで確認してから働き方を決めるのがポイントです。
産休育休中でもできるおすすめの副業やリモートワーク

産休・育休中の副業は、「自宅でできるから安全」「短時間だから給付金に影響しない」とは限りません。仕事内容より先に、今の休業制度と両立できる働き方かを確認してください。
実際に働き始める前は、どこに何を確認すればいい?
- 勤務先:就業規則の副業・兼業ルール、届出や許可の要否を確認する
- ハローワーク:育児休業給付金を受給中なら、予定する就業日数・時間・賃金の扱いを確認する
- 加入する健康保険:産休中なら、出産手当金と給与・就業の関係を確認する
産休中は副業より体調と出産手当金の条件を優先する
産前は体調の個人差が大きく、産後は法律上の就業制限があります。特に産後8週間は原則就業できないため、「時間があるから少し働こう」と考える前に、自分がどの休業期間にいるのかを確認する必要があります。
出産手当金は「出産のため仕事を休み、給与の支払いを受けないこと」などが支給条件に関係します。産休中に別の仕事を始める場合は、自己判断だけで進めず、加入する健康保険や勤務先へ確認してください。
育児休業給付金では「10日・80時間」の就業要件も確認する
雇用契約を結んで他社でアルバイトをする場合、その勤務日数・時間も育児休業給付金の就業日数・時間に含まれます。勤務先を分ければカウントされなくなるわけではありません。
業務委託やフリーランスの副業も、契約名だけで育児休業給付への影響を判断することはできません。 予定する働き方・日数・時間・報酬の実態を伝え、ハローワーク等に確認してください。
在宅副業は「中断しやすさ」と初期費用の小ささで選ぶ
育児中は予定どおりに作業時間を確保できないことがあります。そのため、仕事を選ぶなら「高収入そうか」だけでなく、急な中断に対応できるか、納期を自分で調整しやすいか、初期費用が大きくないかを見る方が現実的です。

育休中は「一番稼げそうな仕事」より、予定どおり進まない日に止めやすい仕事の方が続けやすいです。最初は小さな案件から試すくらいで十分ですよ。
どの仕事でも「育児の合間に必ず簡単に稼げる」わけではありません。必要な作業量と収入の見込みを小さく試し、続けられるかを確認してから広げる方が失敗しにくいでしょう。
産休育休後にアルバイトや仕事に復帰するための準備

産休・育休中に副業をするかどうかだけでなく、復職後の働き方まで見ておくと家計の見通しを立てやすくなります。2025年4月からは、時短勤務による収入減を支える新しい給付も始まっています。
復職前に勤務時間・給与・保育環境を確認する
復帰直後は、勤務時間だけでなく通勤・送迎・家事まで一気に増えます。育休中に副業を始めた場合も、復職後まで同じ作業量を維持できるとは限りません。
育児時短就業給付金で時短勤務の収入減を補える場合がある
2025年4月に始まった育児時短就業給付金は、2歳未満の子を養育するために所定労働時間を短縮して働き、一定の要件を満たす場合に支給されます。
支給額は原則として、育児時短就業中の各月に支払われた賃金額の10%です。ただし、時短前の賃金との関係などにより支給率が調整される場合があります。最新要件は厚生労働省「育児休業等給付について」で確認してください。
2025年10月から3歳以降の「柔軟な働き方」も拡充された
復職後の働き方は、2歳未満の時短勤務だけで終わりません。2025年10月から、3歳から小学校就学前までの子を養育する労働者に対し、事業主が始業時刻の変更、テレワーク、短時間勤務など5つの選択肢から2つ以上の措置を用意する制度が始まりました。
勤務先がどの措置を導入しているかは会社ごとに異なります。厚生労働省の「柔軟な働き方を実現するための措置」で制度の全体像を確認できます。
育休中の社会保険料免除も家計に影響する
会社員など厚生年金・健康保険の被保険者が育児休業等を取得し、勤務先が所定の申出を行うと、一定期間の健康保険料・厚生年金保険料が免除されます。
社会保険料免除の対象期間や短期の育休での条件は、日本年金機構の育児休業等取得者申出書の案内で確認できます。
副業を増やす前に、公的給付・社会保険料免除・時短勤務後の手取りまで並べて考えると、必要以上に働かずに済む場合があります。

収入を増やす方法は、副業を足すことだけではありません。使える給付や時短制度を先に確認すると、家計と育児の負担を両方抑えられることがあります。
産休育休中にアルバイトを考える方に向けたQ&A
最後に、産休・育休中のアルバイトや副業で特に誤解しやすいポイントを整理します。個別の支給可否は、勤務先やハローワーク、加入する健康保険などに確認してください。
- Q育休中にアルバイトをする場合、月いくらまでなら大丈夫ですか?
- A
一律の「月○円まで」という基準だけでは判断できません。
育児休業給付金では、育休期間を対象とした賃金の額に加え、1支給単位期間の就業日数・時間も確認されます。10日以下、10日を超える場合は80時間以下という条件を先に確認しましょう。
- Q他の会社でアルバイトすれば育児休業給付金には影響しませんか?
- A
いいえ。厚生労働省の2026年8月版Q&Aでは、育児休業給付金の就業日数・時間には在職中の事業所以外で就業した分も含まれると案内されています。
副業先を変えればカウントされなくなる、という仕組みではありません。
- Q育休中に副業をすると会社の許可が必ず必要ですか?
- A
勤務先の就業規則によります。
許可制や届出制ならその手続きが必要です。副業自体を一律に禁止していない会社でも、競業・秘密保持・長時間労働などを理由に制限される場合があります。
- Q有給休暇を使うと出産手当金は受け取れませんか?
- A
給与が支払われたからといって必ず0円になるとは限りません。
協会けんぽでは、休んだ期間の給与の日額が出産手当金の日額より少ない場合、その差額が支給されます。
- Q出産手当金と出産育児一時金は同じものですか?
- A
別の制度です。
出産手当金は出産のため会社を休む期間の所得補償、出産育児一時金は出産費用の負担を軽くするための給付です。対象者や計算方法も異なります。
- Q育休から時短勤務で復帰すると使える給付金はありますか?
- A
一定の要件を満たせば、2025年4月に始まった育児時短就業給付金の対象になる場合があります。
2歳未満の子の養育のために所定労働時間を短縮して働くことなどが主な条件で、支給額は原則として時短勤務中の各月の賃金の10%です。
産休育休中にアルバイトや副業を検討する際の重要ポイントまとめ
産休・育休中に収入を増やしたいと考えること自体は自然ですが、この時期は「働けるか」と「給付を受けられるか」を別々に確認する必要があります。

制度名が多くてややこしいですが、見る順番はシンプルです。「今どの休業期間か」→「給付条件」→「会社のルール」の順で確認すれば、大きな見落としを減らせます。
制度は細かく、本人の雇用状況や給与の支払い方によって扱いが変わることがあります。迷ったときは、給付金ならハローワーク、出産手当金なら加入する健康保険、休業制度なら勤務先や都道府県労働局へ確認するのが確実です。
育休中の副業について、給付金や働き方の注意点を別の視点から確認したい方は、こちらの記事も参考になります。
〖2026年〗育休中の副業・バイトはバレない?手渡しの是非と給付金を減らさない働き方を解説
※本記事は2026年8月25日時点で確認できる公的情報をもとに一般的な制度を解説しています。個別の受給可否や就業の可否は、雇用契約・就業規則・給与の支払い状況などで異なります。最終判断は勤務先、ハローワーク、加入する健康保険、都道府県労働局などの窓口でご確認ください。


